日常の中から紐解いていく、LEXUS DESIGN AWARDの3つのキーワード(1)

LEXUS DESIGN AWARD,アート,建築,プロダクトデザイン

13:30

「Design for a Better Tomorrow」をテーマに、クリエイターの発掘・支援を目的として毎年開催されているLEXUS DESIGN AWARD(以下、LDA)。2013年に創設され、今年で9回目を迎える同アワードでは、ファイナリストはワークショップへの参加や、世界的に活躍するクリエイターからのメンタリング、グローバルでのメディア露出などの機会が与えられ、デザイナーにとって国際的な活動の足がかりにもなる、またとないチャンスが得られる場だ。

本アワードでは、レクサスが重視する「Anticipate 予見する」「Innovate 革新をもたらす」「Captivate 魅了する」をいかに具現化しているかという基準で審査が行われる。応募にあたって、デザイナーはこれらの3つのキーワードとどのように向き合えばいいのか。過去受賞者である山崎タクマさん、竹鼻良文さん、吉添裕人さんの3人に、キーワードを読み解いていくためのヒントと、審査員を務めるサイモン・ハンフリーズさんに本アワードへの想いをうかがった。

さまざまな作品を受け入れる、オープンな場として

––みなさんが過去にLDAに応募したきっかけと、それぞれ応募した作品について聞かせてください。

山崎タクマさん(以下、山崎):LDAについては、第1回目の受賞者である五十嵐瞳さんが大学の先輩だったので、彼女の受賞をきっかけにその存在を知りました。

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山崎タクマ 2015年多摩美術大学卒業後、キヤノン株式会社のプロダクトデザイナーとして入社。幼少期から北海道の自然の中で発見を楽しみ過ごしてきた。父は家畜保険衛生の獣医師で、家畜動物の施術等の現場を見て育った。人と生き物の距離について日々探求している。

2016年受賞作品の「Bio-Vide」は、「土に還る」というコンセプトを視覚化した作品で、落ち葉を使ったレターセットと、テーブルのパーツサンプルを提案しました。システマチックな大量生産があふれているいま、店頭で最終的なかたちに仕上がったプロダクトが並んでいるのをみていても、ものがつくられるバックグラウンドはまったく見えてこないですよね。

実際にプロダクトについて調べていくと、その一部に生き物が使われていることもよくあるんです。そこで、生き物と人間が接する時の大事な感情を残しながらプロダクトを構築すると、どういったことが起こるのかということを深めていくプロジェクトとして、落ち葉を加工した板材をつくりました。

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2016年にパネル受賞した「Bio-Vide」

竹鼻良文さん(以下、竹鼻):僕は25歳で独立をして、デザインと建築を主体とした事務所を立ち上げたんですが、請負仕事だけを続けていくと今後厳しくなるだろうと、自分で仕事をつくることを考えていました。その時に、コンペで勝つということもひとつの価値付けとして大切だなと思い、いろいろとコンペに応募していました。

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竹鼻良文 クレイジータンク代表 建築家・デザイナー LEXUS DESIGN AWARDなど受賞歴・展覧会審査員多数。TAKEHANAKEブランドオーナー。

応募した作品「MASS PRODUCTION TO UNIQUE ITEMS」は、大量生産された陶器や破棄される陶器を焼き直すことで、新しい価値を持った器にすることができるという移動型窯です。入れるものや燃料、焼く場所の酸素の濃度の違いによって仕上がりが変わってくるので、職人さんでも焼いた後の仕上がりわからないくらい、唯一無二のものができ上がるんです。

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「TAKEHANAKE-Bungorogama」(竹鼻良文、奥田文悟、奥田章)として2017年にパネル受賞した「MASS PRODUCTION TO UNIQUE ITEMS」

吉添裕人さん(以下、吉添):僕はフリーランスで働いているんですが、応募した2016年はちょうどぽっかり仕事が空いてしまった時期でした。その時に、アワードの募集告知が目に止まって、おもしろそうだなと思って応募しました。

そこでファイナリストとして入賞することができて、ミラノデザインウィークに連れて行っていただけたのですが、とても感動したんですね。アワード事務局の方々が「何度でも応募できますよ」と言ってくださったこともあり、次の年も応募したところ、今度は幸運にもグランプリを受賞することができました。

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吉添裕人 武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。東京を拠点にホテルやレストラン、ショッピングモール等の商業環境に特化した空間デザイン業務を担っており、独立後に携わったプロジェクト数は250を超える。また近年、クライアントワークとは異なる個人制作を開始。その作品は国際的なコンペティションであるLEXUS DESIGN AWARD 2016にてTOP12、翌年2017年にはグランプリを受賞。2018年にはアメリカの建築誌『dwell』が選ぶ、世界の注目若手デザイナー「dwell24」に選出されている。過去4年間で日本、イタリア、アメリカ、ブラジル、中国等、各国でインスタレーションやコラボレーション作品を発表している。

最初に応募した「PLANTS-SKIN」は、土が湿ることで、植木鉢の表面が反応して色が変わるという作品です。土が乾くと植木鉢の色が白に戻り、水やりの行動を促してくれる。植木鉢への水やりという行為を通じて植物とコミュニケーションを取ることができるような、そんなことを考えてつくった作品です。

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2016年にパネル受賞した「PLANTS-SKIN」

2回目に応募した際、グランプリを受賞させていただいたのが、「PIXEL」という作品です。これは光を通すという構造の特性と同じかたちの積み重ねによってできる可変性を生かした建築資材の提案で、アナログな仕組みなのにデジタルエフェクトのような光の効果がかかり、光と影の存在感や美しさを味わえる作品として仕上げました。レンガや障子のハイブリットのような、次の世代のスタンダードを目指す素材になるとうれしいなと思って制作した作品です。

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2017年にグランプリを受賞した「PIXEL」

——受賞を通して感じた、LDAの魅力とは何だと思いますか?

山崎:LDAは僕が個人で出したはじめてのコンペでした。応募した作品は「命の消費」という命題を深いところまで掘り下げたものだったのですが、こういった想いを真剣に聞いてしっかりと受けて止めてくれるコンペは、日本では稀で、とても貴重な場だと感じています。

竹鼻:このコンペのいいところは、既視感のないものでも受け入れてくれるというところだと思います。僕が応募した作品は、当時は「焼き直し」ということを誰もやったことがなかったため、陶芸家の方々からは受け入れられなかったんですね。そういったこれまで世の中になかったものを、新たな価値として発信できる場所として、このアワードに魅力を感じていたからだと思います。

吉添:LDAは、世界中から審査員やメンター、ファイナリストの方々が集まる場で、文化背景は違いながらも、人間というひとつの軸で見た時の普遍性や美しさ、精神性など、そういったところまで見ていただけます。このアワードはすべてのジャンルや応募対象がオープンになっているところがいいですよね。

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2017年受賞時のメンタリングの様子。メンターのスナーキテクチャとのセッション。

身近な感覚としての「Anticipate」「Innnovate」「Captivate」

——LDAは、「Anticipate( 予見する)「Innovate(革新をもたらす)」「Captivate(魅了する)」という審査基準が設けられています。日常生活の中でこれらのキーワードに感じることはありますか?

山崎:「予見」に関しては、日常で過ごしている中でのちょっとした違和感であったり、氷が溶ける瞬間、水たまりに空が映っている時に感じるような情緒に訴えかける感覚など、自身が経験してきたものがつながることによって生まれるものだと思うんです。「これは世の中にはまだなく、うまく言えないけれど、美しいものが生まれる“かも”しれない」など、そんな着想のきっかけを与えてくれるようなことは日常にたくさんあって、そのセンサーは人それぞれ違う。そんな感情や感覚に素直になれる時間を自分につくってあげることが大事だと思います。

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竹鼻:僕は10年以上スペキュラティブデザインの領域で仕事をしているので、対象となるもののポテンシャルを読み解いて、将来的にいいものにするためにはどうすればいいのかを、例えばまちづくりであれば地域の方や行政の方達たちとみんなで考えているのですが、まさに「予見」は3つテーマの中で一番重要だと思っています。予見することによって「革新」は起こりますし、その革新を伝えるためには人を「魅了」しないといけない。この3つのテーマは別々のようで、実は一緒のものだなという感覚があります。

吉添:3つのテーマはそれぞれ壮大な言葉ではあるけど、僕の中ではかなり身近な感覚に置き換えられるものだし、置き換えてみることが大事なのかなと感じますね。

たとえば、日常のちょっとした気づきや判断といった「予見」から新しい発想が生まれたり、シンプルな視点の変化が作品制作における「革新」になっていったり。わかりやすいイノベーティブな素材や手法の発明ももちろん「革新」だけど、もう少し自分の身近な感覚や暮らしに寄り添って考えることが、デザインの大切なプロセスなんじゃないかなと感じますね。

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