言葉の障壁はゼロ。スキルと情熱をもった多国籍のチームワーク

2014年にサービスを開始し、2021年10月現在で登録アカウント数が660万超え、70万店舗以上の販売店で利用可能なあと払いサービス「ペイディ」。「お買い物に“めんどくさい”はいらない。」をミッションに掲げ、徹底したカスタマーエクスペリエンスに重きを置き、急成長しているサービスだ。

ペイディは海外では一般的な決済手段として普及している「BNPL(Buy Now Pay Later)」と呼ばれるあと払いサービスのひとつだが、シンプルなUXや翌月一括あと払いまたは3回あと払いで支払いが可能な利便性、スマホでかんたんにお金の管理ができる点などから幅広い年代のユーザーが利用している。

本記事では、2021年9月に新しいブランドの姿勢を示すべくロゴを刷新したばかりの同社のエクスペリエンスチーム4名に取材。ペイディのサービス内容や、“めんどくさい”を感じさせないカスタマーエクスペリエンスにつながる同社のダイバーシティカルチャー、今後のブランドのあり方などについてお話を伺った。

言葉の障壁はゼロ。スキルと情熱をもった多国籍のチームワーク

――まずは、みなさんの自己紹介をお願いします。

田中正秋さん(以下、田中):僕は、自分も含めたUXデザインチーム3名のマネジメントを行いつつ、提供しているサービスすべてのデザインに関与しています。決まったものをかたちにするときは、各デバイスのルールに則りつつ、ペイディとしての色をどう付けていくかをチームで議論していきます。ユーザーニーズやストーリーテリング、デザインそれぞれの面を合体させることで、よりよいカスタマーエクスペリエンスとして提供できるようにマネージャーとして関わっています。

田中正秋 株式会社Paidy シニアマネージャー オブ インタラクションデザイン&UXストラテジー。米国メリーランドインスティテュートカレッジオブアート(MICA)卒業。NY発ファッション通信のWebデザインをリードしたのち、日本IBMに入社し、通信・保険・金融業界でのDX推進に向けたUI/UXデザインに着手、新たな体験価値を支援。デザイン思考を駆使したモノづくり開発を広めるためLINEに入社。2020年11月より現職。

田中:肩書きとしては、シニアマネージャー オブ インタラクションデザイン&UXストラテジーですが、新機能を導入したり、そのUXを設計する際には、他部署のスタッフを集めてワークショップなども行っています。現状の課題は何か、そのためには何をつくればより多くのユーザーに使ってもらえるのか、場をファシリテートするのも仕事です。

宮崎直人さん(以下、宮崎):僕はUXライターとコピーライターという2つの職能を横断する立場で、半年前に入社しました。コピーライターはさまざまなメディアなどで宣伝する際のコピーを考える仕事ですが、UXライターはユーザーの気持ちに寄り添って体験をサポートしたり、体験の価値を高めるように配慮したライティングを考える仕事で、プロダクト自体をつくっています。例えば、ガラケーのときは分厚い説明書がありましたが、iPhoneにはありませんよね。そういった新しい機能やサービスを、説明書がなくても快適に使ってもらえるように言葉をデザインする仕事です。

宮崎直人 株式会社Paidy シニアマーケティング/UXコピーライター。立命館大学MOT大学院修了後、日本経済社に入社。1年間の営業経験を経て、コピーライターに。2019年にコピーライターとして楽天に入社。顧客戦略部でポイント戦略に従事。2021年より現職。

宮崎:また、ブランディング領域にも関わっていて、例えばペイディが人間だとしたら、「ペイディさん」はどういう言葉を使って、どんな話し方をするのか、どういうキャラクターであればファンになってもらえるかなど、言葉のトーン&マナーを整えていくことで、ペイディのあり方を明確にしていくようなことも行っています。

クレイグ・ドレイクさん(以下、クレイグ):私はクリエイティブディレクターで、ペイディとは何であるかを世の中に提示することを自身のミッションだと考えています。CMやWebサイト、アプリなど、どんなメディアやツールに出る際にも「ペイディとはこうである」というぶれない芯が必要ですし、ユーザーにはいつもそれが伝わっていなければなりません。一方でペイディは常に進化しているので、それに対応した打ち出しも大切です。ペイディが社会の中でしっかりと認知されるようにすることと 、伝統的な金融のサービスとは一線を画した独自のブランドであるということを浸透させることが私の仕事です。

クレイグ・ドレイク 株式会社Paidy クリエイティブディレクター。カレッジ・フォー・クリエイティブ・スタディーズを卒業後、エレクトロニックアーツでシニアデザイナーとして活躍。2007年にルーカスフィルムに入社し、スターウォーズのフランチャイズをサポートするさまざまなマーケティング経験を開発。NetflixでクリエイティブディレクターとしてMarvelシリーズをリードしたのち、2020年1月より現職。

ジョルジャ・ブルサディンさん(以下、ジョルジャ):私はビジュアルデザインマネージャーの立場で、おもな役割はグラフィックの手法でブランドを可視化して育てることと、ビジュアルアセットを育てることです。スティーブ・ジョブスは「デザインとは単にどのように見えるか、どのように感じるかということではない。どう機能するかだ」と言っていましたが、その通りだと思っています。コピーも同じですよね。ただ正しい言葉で説明するのではなくて、それがどう機能していくかを考えなくてはいけません。私は、インタラクションデザインチームが立てた戦略や目的を、どのようなビジュアルで表現すればサポートできるかということに日々取り組んでいます。

ジョルジャ・ブルサディン 株式会社Paidy ビジュアルデザインマネージャー。ミラノ工科大学デザイン学部を卒業後、イタリア、日本、シンガポールで「Nendo」や「Creativeans」など受賞歴豊富なデザイン会社でビジュアルコミュニケーションデザイナーとして活躍。南洋工科大学(NTU)の講師も務めた。2020年1月から現職。

――みなさんで構成されるエクスペリエンスチームとは、どんなチームなのでしょうか?

田中:エクスペリエンスチームは、インタラクションデザイン3名、クリエイティブデザイン3名の2チームで構成されています。インタラクションデザインは、ユーザー視点でものをつくることを軸にしていて、情報アーキテクチャー、ワイヤーフレーム、カスタマージャーニーマップ、プロトタイピングなどを駆使することで、誰もが一目で理解でき、ストレスなく使えるデザインと言葉の設計を行っています。クリエイティブデザインは、タイポグラフィーや色、アニメーションなどのバランスを考えて、ユーザーがワクワクするようなコンセプトから、最終的なアウトプットまでビジュアル全般を担当します。

他の会社と少し違う部分で言うと、直人さんのようなUXライターがチームにいてくれるのはとても心強いですね。UXは「こういう遷移にしたほうがシンプルできれいだからこうしよう」とか、どうしてもビジュアル優位になってしまうところがありますが、UXライターのストーリーテーリングの視点を入れていくことで、より濃くて満足のいく体験ができる可能性が広がる。それは確実にペイディのサービスの魅力につながっていると感じています。

――社員の出身国籍は30カ国以上でさまざまな方が在籍していますが、みなさんコミュニケーションはどのように取っているのでしょうか?社風なども教えてください。

田中:いまはリモートワーク中心なので、コミュニケーションはおもにSlackを使っていて、多くの社員が自動翻訳機能を活用しています。ステークホルダーやシニアマネージャーのコミュニケーションは英語が基本ですが、みんな日本語ができないということもありません。各職能のプロフェッショナルで形成されている集団のため、相手に対する信用があるので正直言語が壁になることがあまりありません。何かをすごく伝えようとしている人がいたら、聞く側が努力して相手が何を言いたいのかを理解しよう、という姿勢があります。

宮崎:エクスペリエンスチーム6人の中で僕だけ日本語しか話せないのですが、仕事に支障はありません。最初は不安もありましたが、UXライティングという自分のスキルを信頼してもらえているから、その部分でパフォーマンスを発揮するのが自分の役目であるし、必要なときは誰かが翻訳してくれます。

社内に飾られている社員の顔写真

田中:あとは多国籍のメンバーが集まっていることで、日本人の視点だけではなく、アメリカの場合はこう、ヨーロッパの場合はこうだという、思いも寄らなかったニーズが浮上してくるのが面白いです。ユーザー視点で考えよう、いい顧客体験を提供しようという指針はチームのメンバーで共有されているので、何か問題が発生しても、デザインもエンジニアリングもセールスも同じ方向を向いて動けるフットワークのいい社風です。

――ちなみに、意思決定はどのように行なっているのでしょうか?

田中:それぞれの専門分野があるので、各自の観点から見解や思いを熱く伝え合っています。ビジネスの側面からKPIを追っていくことはもちろん重要ですが、それを追うあまりにユーザーの体験がつまらなくなったり、快適じゃなくなってしまったら意味がない。UXストラテジーの立場からは、ユーザーを主役に据えた意見を推すことが多いですが、最終的にはそれぞれの意見が集約されて着地していきます。

ジョルジャ:他の部署ももちろんだと思いますが、エクスペリエンスチームは普段から密に連携しているのでチーム内の意思決定がスムーズです。全員が異なる強みやスキル、情熱を持っているので、メンバーが決めたことを信頼し、他の部署や経営層に提案するときは、クリエイティビティが下がる方向に行かないように、パッションを持ってプレゼンしています。

クレイグ:さまざまな背景やニーズを持ったステークホルダーから、解決したい課題をもらう際、「このような解決策があるのでは?」と示されることもありますが、それが最適なのか取り組んでみないとわかりません。取り組んでみると、もともと思っていたよりも大きな問題や、隠されていた別の問題が見えてくることもあります。チームメンバーの知識とスキルが有機的に交差することで、求められたこと以上の本質的な打ち返しができる。すべてはよりよいカスタマーエクスペリエンスのためにやっていることですが、私たちのこの姿勢は他のチームにもいい影響を与えているのではないかと思っています。

“めんどくさい”を解決するためのサービスリニューアル

――では、“めんどくさい”を感じさせないをミッションに掲げるペイディのサービスについてお聞きしていきます。2021年上半期に大きくリニューアルを行われたそうですが、どのような課題があったのでしょうか?

田中:ペイディはメールアドレスと電話番号を登録するだけで利用開始ができます。でも、「3回あと払い」や使用シーンが広がる「どこでもペイディ」というサービスを使うためには、本人確認が必要な「ペイディプラス」への登録が必須になります。もともと登録には免許証かマイナンバーカードという個人情報を手入力する必要があったのですが、めんどくさいと感じてドロップアウトしてしまうユーザーが多く、まずはこのハードルを越えなければという課題がありました。

ペイディ

宮崎:ユーザーからすると、「ひとつのアプリを使うだけなのになんで本人確認しないといけないの?」という印象になってしまう。だからきちんと説明して納得してもらい、気持ちよく使えるように配慮しました。ユーザーから信頼してもらうために、本人確認した際のメリットや詐欺の防止、なりすまし被害を防げることや情報が安全に保管されることをビジュアルや言葉を通してコミュニケーションをとり、改善を図りました。

ペイディプラス(本人確認)を行う際のアプリ画面

田中:以前はアプリ内で完結できるフローではなかったこともあり、コンバージョンは3%くらいで……。でもエンジニアチームが奮闘してくれて、いまでは身分証明書を撮影するだけで本人確認が可能になりました。情報は自動的に読み取られるのでユーザーはその情報を確認するのみでOKになり、結果、コンバージョンは25%くらいまで上がりました。現在も改善を続けており、使いやすさは日々改善していて、当初と比べて飛躍的にスムーズになっています。

――よりユーザーが使いやすいサービスにするため、ほかにはどんなことを実践していますか?

田中:ユーザーリサーチを行うチームがあり、定期的にユーザーインタビューを実施しています。「ここがわかりにくい、ここをこう直してほしい」といった声を吸い上げ、それをデザイナーとライターで解決していくことが多いです。

日々サービスが拡張しているため、ユーザー層も変わるんですよね。特に最近ではAmazonやAppleが加盟店になったことで、より幅広いユーザー層の方々に使用いただくようになりました。もともとは20代女性をメインユーザーと想定していましたが、その前提条件から変わってくるので、徐々にアップデートしています。

宮崎:ペイディは、プロダクトの成長の速さが尋常ではないなと感じます(笑)。毎月のようにできることが増えては、どんどん変わっていく。新しいことができるたびに、新しいユーザーが増えるから、それを見ながら日々対応していっています。

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