アッシュコンセプトがデザインコンペを通して伝える、「+d」ならではのモノづくり

アッシュコンセプト,プロダクトデザイン,ライフスタイル

7 10:15

「アニマルラバーバンド」「カオマル」といった製品を生み出してきたブランド「+d(プラスディー)」をはじめ、さまざまな企業や産地とコラボした製品を取り扱う店舗も展開するアッシュコンセプト。

“モノづくりを通して世の中を元気にしたい”という同社が2017年に立ち上げたのが、商品化を目指したデザインコンペ「アッシュコンセプト デザインコンペティション」だ。今年2回目を迎える同コンペについて、アッシュコンセプトの名児耶海(かい)さんに、コンペ開催に向けた思いや、同社が目指すモノづくりについて伺った。

使い手の笑顔や喜びをゴールにしたモノづくり

――これまでに多くの製品を発売されてきましたが、モノづくりを行う中でどのようなことを大切にしていますか?

2002年にアッシュコンセプトを立ち上げて今年で18年目ですが、これまでに150組を超えるデザイナーの方々とともに、100種類以上のアイテムを手がけてきました。すべてに共通するのは、製品を使ってくださるエンドユーザーの方が笑顔になること、喜ぶことをしていきたいということです。

0から1を生み出すデザイナーの思いも使い手の笑顔に向かっていますし、そこに携わる私たちや工場の方々、製品を運んでくださる方々、取り扱っていただく店舗の方々、みんなが同じゴールを目指してモノづくりをしようというのが私たちの思いです。

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名児耶海 アッシュコンセプト株式会社 取締役

自社ブランド「+d」の最初の製品に「アニマルラバーバンド」というものがあって、これは言ってしまえばただの輪ゴムですが、道端に落ちていてもつい拾いたくなるような、いつまでも大事にされるものを、という想いから動物の形のデザインが生まれました。

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アッシュコンセプトのオリジナルブランド「+d」のアニマルラバーバンド

一つのデザインをきっかけにものを大切にしたり、誰かに伝えたくなったり。モノが人を笑顔にできるように、デザインには身の回りの環境をよりよくする力がありますが、アニマルラバーバンドはまさに弊社の思いを象徴する製品だと思っています。

想像していなかった繋がりが生まれる、コンペという場

――そんな御社は2017年に、商品化を目指した「アッシュコンセプト デザインコンペティション」をスタートされました。立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?

そもそもの経緯は2012年に遡りますが、当時、私の父にあたる弊社代表の名児耶秀美(ひでよし)が武蔵野美術大学の客員教授をしていたんです。その時、実際にアッシュコンセプトという立場でモノづくりをしている自分たちならではの体験を提供できないかと、商品化を前提にした産学連携コンペを2012年から5年間行いました。

やはりデザインは、商品が人の手に届いて使われて初めて完成されるものだと思うのですが、授業の中でそこまで体験するのは難しいですよね。だったらデザインやモノづくりを学生たちが少しでも体感できる仕組みをと、武蔵野美術大学内だけではなく、他大学からも広く応募を募る形のコンペを考えたんです。

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産学連携コンペ 審査の様子

――その産学連携コンペが「アッシュコンセプト デザインコンペティション」の前身だったのですね。

はい。2017年にアッシュコンセプトが創立15周年を迎えたので、それをきっかけに学生にとどまらず、すでにプロとして活躍しているデザイナーなど、より多くの方に参加していただける場に変えました。

――産学連携コンペを含め、過去のコンペを振り返ってみての感想は?

産学連携コンペの初回開催時に印象的なことがありました。「+d」というブランドはかなりユニークで、ファンシーすぎずキャラクターに寄りすぎず、デザインとアートの中間くらいのモノづくりを目指しています。世界のインテリアショップや、ミュージアムショップに並ぶようなプロダクトをつくりたいという気持ちでやっているのですが、いざ蓋を開けてみるとキャラクターっぽい応募作品が多かったんです。そこではじめて、「+d」がこういう風に捉えられているんだということを知りました。

それまでは販売という形で私たちが一方的に製品を発信するだけで、ユーザーとのコミュニケーションがなかなか図りづらかったのですが、コンペを開催することで客観視できたのはとても新鮮だったし、貴重な機会でした。

――コンペを開催してきた中でどんなことを得られたと実感していますか?

コンペで得られたものは何といってもご縁ですね。1回のコンペで選ばれる受賞者は3〜5名ですが、それ以外の方が数年後に別の形でデザイン提案をしてくださることも少なくありません。また、審査員の方々とも深く繋がることができ、参加コンペから新商品が出た際にはみなさん喜び、力強く応援してくださいます。

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「+d」をはじめ、 さまざまな企業や産地とつくり上げてきた製品が並ぶ、デザインプロダクトショップ「KONCENT」。写真はオープンしたばかりの「KONCENT 駒形本店」

コンペの開催は私たち自身がいろいろな作品に触れることで刺激を受けたいという思いもありましたが、それ以上の想像していなかった繋がりがたくさん生まれています。コンペのテーマ一つを決めるにしても、我々がどんな表現・モノづくりをしていきたいかということを改めて立ち止まって考えるきっかけになっているので、過去6回のコンペで社内にもいい影響が広がっています。

たくさんの作品に出会うとともに、アッシュコンセプトの思いを届ける機会に

――今回が第2回となる「アッシュコンセプト デザインコンペティション」ですが、どのような機会にしたいですか?

学生・プロを問わず、いいアイデアがあってもどこに持って行けばいいのか、誰に相談したらいいのかと悩む方はたくさんいると思うんです。だからぜひこのコンペで気兼ねなくアイデアを提案していただきたいし、「アッシュコンセプトは知らなかったけどデザインの商品化に興味がある」というような、これまで我々と接点のなかった人にも広く提案していただく機会になればと思っています。

あとはやはりこのコンペを通して私たちがどんな思いでモノづくりをしているのか、アッシュコンセプトの目指すべきところ、デザインで社会を元気にしたいという精神性を少しでも届けられる機会にしたいですね。

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――「ひとめ惚れ」という今回の募集テーマにはキャッチーな印象を受けましたが、どのような意図があるのでしょうか?

このコンペも2回目を迎え、少しステップアップをしたいと考えました。前回は「暮らしを楽しくする 彩りを添えるような生活用品」というテーマだったのですが、これはある意味、私たちがこれまで形にしてきたものの総称でした。そこからもう一歩踏み込んで、どんなテーマなら応募者がワクワクしてイメージを膨らませやすいだろうとプロジェクトチームでキーワードを出していった結果、「ひとめ惚れ」というテーマに辿り着きました。

というのも、よく代表の名児耶(秀美)が「人とモノの関係は恋人のような形が理想」と言うんです。生活に寄り添って、たまに目が合ってつい嬉しくなったり生活にハリが出たり。店の中でも、商品と目が合った瞬間に「これ欲しい!」と心奪われるようなモノづくりができたら最高ですよね。

――どんな作品の応募があるのか楽しみですね。ちなみに、参加費用がかかるのも同コンペの一つの特徴かと思いますが、あえてこの形をとっていることには理由があるのでしょうか。

産学連携コンペは無料で参加できただけに、参加費用については私たちも最後まで悩みました。ただ、現実的にこの先もコンペを継続させるためにはどうすべきかということと、あとは1,500円という金額は人によってさまざまな捉え方があると思いますが、参加する側も覚悟をもって応募していただけるのではないかと考えたんです。参加費を募ることは私たちにとっても自戒になりますし、その分こちらも責任をもって、真剣に応募作品と向き合いたいと思っています。

ブランドらしさと作品の背景にあるストーリーを大切にしたい

――今回応募される方々にはどのようなことを期待しますか?

「+d」の製品って、中には「本当にこれ使うの?」とクスッと笑えるような、私たちならではのユニークさを持ち合わせていると思うんです。完成された機能美というわけではないんですが、ある部分でものすごく感情移入できたり手にしたくなるような。そういった「+d」ならではのアイデアを募りたいのはもちろん、一方で私たちが大事にしているのはストーリー性です。

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第1回アッシュコンセプトデザインコンペティションの最優秀賞作品「kazeguruma(受賞時:pinwheel pin)」

デザイナーがどんな思いでそのデザインを思いついたのか、お客様に届けたいのか、作品の背景にあるストーリーを大切にブランディングしているので、面白い・ワクワクするといったことに加え、ストーリー性や応募者なりのデザイン哲学を、ぜひ作品に込めて表現していただきたいと思っています。

2017年の第1回コンペで最優秀賞を受賞した「kazeguruma(受賞時:pinwheel pin)」にも、素敵な背景がありました。“小さな風車が回る姿は、日常を優しく包み込んでくれる。たくさん並べても賑やかで楽しく、疲れた時などにはため息の代わりに目の前にある小さな風車を回すことで息を整えて元気になってもらいたい”というのが、デザイナーの阿津侑三さんが作品に込めた思いでした。

普段は目には見えない風を可視化するコンセプトに共感し、私たちはいつもの暮らしに楽しさと彩りが添えられる「暮らしにかぜを飾るマグネット」というイマジネーションを添えて世界中に届けています。

センスやデザイン性ももちろん大切ですが、その背景に込められた思いやストーリーに心を動かされる。そういった提案がアッシュコンセプトは大好物です(笑)。

――長く継続できるコンペになるといいですね。

そうですね。商品化を念頭に置いている分、優れたアイデアをいただいても想定価格や技術との兼ね合いで断念せざるを得ないこともありますが、皆さんのアイデアをできる限り商品化して社会に届けたいと考えています。学生の方にとっても社会人の方にとっても、このコンペがデザイン業界の一つの登竜門として認知されるような、夢のあるものに育てていければいいですね。

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取材・文:開洋美 撮影:高比良美樹 編集:石田織座(JDN)

■アッシュコンセプト デザインコンペティション 2020
https://design-compe.jp/

【テーマ】ひとめ惚れ
【登録・提出期間】2020年7月1日(水)~8月31日(月)必着
【出品料】1,500円(1点につき)
【賞】最優秀賞(1点)30万円、優秀賞(2点)15万円
※商品化が確定して販売が開始された場合+ロイヤリティー
※特別賞を設ける場合があります

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