eスポーツを活用して社会をつなぐ、コミュニケーションを促す空間づくり(2)

丹青社, 梓設計, NTTe-Sports,建築,エンターテインメント

7 18:35

プレイヤーの視点でつくられた、三角形の机

影澤:フレキシブルという意味では、この施設のためにつくられた机も特徴的です。限られた空間の中でいろいろな使い方をしたいという時に、既存の四角い机は使い勝手が難しいなと思っていたんです。いろいろな場所でイベントをやってきた身からすると、既存の四角い机ではレイアウトのバリエーションがかなり限定されてしまうため、お二人に相談して三角の机の案をいただいた時は「おっ!」と思いました。

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eXeField Akibaに置かれている、角を落とした三角形の机

山下:この話の起点として、eスポーツはいろいろな形態があって、5対5のチーム戦の時もあれば1対1の格闘ゲームもありますし、100人規模のバトルロワイアルなどさまざまなんです。そんな中、既存の同じテーブルでレイアウトを組もうとすると、どこかで無駄が生じてきます。要はモジュール(基本単位)の設定なんですよね。なのでまずは1モジュールをつくるところから岩瀬さんと議論して、床のグリッドを引き、フレキシブル性を出すために、角度もつけられるように三角の机を提案しました。

影澤:三角の案が出てきて、さらに「机の角を落としてほしい」という相談をしました。例えば四角い机を4つくっつけた場合、配線ケーブルを逃がす場所がないので、隙間を開けざるをえないなど扱いに困っていたんですが、角を落とした三角の机だと真ん中に穴が開くので、そこにすべてのケーブルを逃がすことができるんです。

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2人用、大人数用など、いろいろなレイアウトに対応できる。

岩瀬:実際にプレイしている人じゃないと出てこない発想ですよね。山下さんとの議論をひとつ思い出したのですが、はじめに「ゲームの最小単位を考えよう」という話をしたんです。ゲームの最小単位というとドットや〇×、コマンドなど、そういうゲームのグリッドのようなものがこの施設に引けると面白いですね、と話しました。

それでこのテーブルをカーペットのグリッドに合う三角の最小単位のモジュールと考えたり、ロゴのデザインにも繋がっていくといいなとか。あと考えていたのは、これさえあれば「eXeField」だとわかるような単位をつくれたら面白いんじゃないかという話もしていました。「eXeField」が将来的にいろいろな建築や空間に広がっていったとしても、そこに私たちがデザインしたモジュールが使われていたらどんなところでも「eXeField」と呼べるし、それが理想の形かもしれないなと。

——そういう根本のようなお話を最初にすることは大事ですよね。

岩瀬:すごく大事な議論だったと思いますし、そういうことが空間の端々にあらわれているんじゃないかな。ロゴも掛け合わせのようなデザインになっていますが、NTTe-Sportsさんがeスポーツを推進していく中で誰もがコラボしやすいような、開いた形でブランドが広がっていってほしいなと思います。

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山下:今回、結果としてeスポーツの固定概念のような「形」を崩せるようになったのは、機能性そのものが発想の起点だったからだと思います。だからこそ、eスポーツ“も”できる施設になりました。この机もeスポーツ専用というわけではないし、部屋の角に入れるとちょうど良かったりして、テレワークなどにも使えるものになっています。

影澤:購入したいという声も複数いただいていて、いま検討を進めています。

——そういったフレキシブルな活用方法は、今までのeスポーツ施設ではあまり見られなかったように思います。

影澤:そうですね。ほかのeスポーツ施設運営を手がけている方にここを見ていただくと驚かれることが多いです。「eXeField Akiba」をきっかけに「eスポーツ施設」という言葉のイメージが、「eスポーツができる環境が整った施設=いろんなことができる場所」という認識に変わっていき、ゆくゆくはそれが普通だと感じるくらいの状況になったら嬉しいです。

eスポーツを社内コミュニケーションの機会に

——eスポーツ以外にも新たな用途が見出されている「eXeField Akiba」ですが、実際にはどのような用途での施設利用があるのでしょうか?

影澤:一番多いのは、eスポーツのイベントや大会の配信をするといったスタジオ的な使い方ですね。プレイヤーはここにきてプレイし、その様子を配信したり。オフラインでは、少人数のイベントなども開催されています。プロゲーマーのファンイベントや、コミュニティの大会など、規模はさまざまです。

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実際に行われたイベントの様子(撮影:大須晶)

岩瀬:あとは、想定していたよりも視察にお越しいただくことが多いのですが、見ていただくだけだと伝えられる情報に限界があるため、セミナーなどを開催して「eXeField Akiba」のことを理解してもらう機会をつくって、ビジネスユースも可能だということもアピールできたらいいですね。

山下:以前ここでライブをやっていた方がいて驚いたのを覚えています。これは想定していなかったなと……(笑)。でもこの大きなスクリーンをすべて背景にするというのも新たな発想ですよね。こうなると、どこまでeスポーツ以外の用途が広がるのか楽しみです。

——eスポーツとは違う目的でもこの施設を活用できるという、まさに「eスポーツ“も”」という言葉を体現しているような気がします。近年は一般企業のレクリエーションとしてeスポーツを取り入れるところも増えているようですね。

影澤:先日「eXeField Akiba」でも、ある企業が貸し切りで社内eスポーツ大会を開いたことがありました。実際にその場に来たのはプレイヤーの10名ほどで、YouTubeの限定配信を利用してほかの社員に向けて配信する、といった利用方法でした。プレイヤーはもちろん、見ている方も大いに楽しんでいたようです。

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山下:僕は、企業対抗戦で20代と50代の方が一緒にプレイしているのを見たことがあります。仕事だと関わる機会も少ない人同士が、会話をしながら同じものを同じ目的で取り組むことは、体験としてとても貴重だと感じています。特にeスポーツはフィジカルを要するスポーツではなく、ダイバーシティの面でも非常に注目されています。老若男女関係なしに同じ土俵に上がりやすく、フラットにコミュニケーションが取れますし、実は僕自身も社内のメンバーとチームをつくって大会に出たりもしています。

影澤:そういった流れができたのは、社内のエンゲージメントの低下という世間的な要因がありますね。カラオケやボーリング、飲み会など、特に若者の参加が減っていると聞きます。世代間交流の仕方がわからなくなってしまっている……。その解決策として一番手っ取り早いのは、好きなものを共通言語にして同じ活動をすることなんです。

岩瀬:でも、こういった流れの根っこは、これまでの社内レクリエーションのカラオケやボーリング、飲み会などと何ら変わりません。「みんなで楽しく真剣に取り組めること」の対象が、eスポーツになったというだけなんです。しかも、ゲームだとプライベート感があるので、気張らずにコミュニケーションを取れるようになるんですよね。

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型にはまらない空間で、eスポーツの新たな価値を提案

——最後に、「eXeField Akiba」として目指したいことや、施設のオープンから半年を経た上での今後の展望などをお聞かせください。

影澤: 先ほどの話と少し重複しますが、「eXeField Akiba」はNTTe-Sportsのeスポーツ施設事業のシンボルとして設立しましたが、使い方はeスポーツに限りません。使い方や楽しみ方などは今後も多方向に広げていきたいと思っています。ここをモデルとして、「型にはまらない」「フレキシブル」というエッセンスをフォーマット化して、全国に広げていきたいんです。

岩瀬:そうですね。例えば、地域に「eXeField Akiba」のような施設をつくりたいというお話が出てきた時に、ここの良い遺伝子をそのまま、文化として広げられるようにしたいんですよね。「eスポーツをするためだけの施設」という広がりは避けたいんです。そのためにもまずは、eスポーツの施設は「eXeField Akiba」のような多機能に利用できるフレキシブルな空間であるという認識をみなさんに持っていただけるようにしなければなりませんね。

影澤:ゆくゆくは、それが地域の課題を解決する要因になる気がしています。例えば、公民館やコミュニティスペースを、最先端のこともできる多目的な施設にしていく。そうすると、そこに携わる方たちのコミュニティが生まれます。そこからシナジーが生まれ、やがて地域活性化につながるかもしれません。

山下:どんどんチャレンジを重ねて、それが新たなスタンダードになるようにしていきたいですね。eスポーツの施設事業は特に、建築やデザインだけでは完結しないんです。「つくる側」だけでなく、「使う側」の方々がもっと関わると、さらに盛り上がる可能性を秘めているんですよ。携わってくれるプレイヤーたちの視点から意見をいただき、オープン時の「eXeField Akiba」から変容を続けて、フレキシブルな空間を生み出せたらいいですね。

影澤:私たちとしても新たな可能性をどんどん試したいと思っているので、積極的にお話は受け入れるようにしています。また、この柔軟さは、「eXeField Akiba」が「完成形のない施設」であることから発生するのだと感じています。どんな取り組みを行えば、よりたくさんの方に親しみを持っていただけるのか。関わるみなさんと一緒に試行錯誤、ブラッシュアップを重ねて、より間口の広い場所にしていきたいと思っています。オープンが完成ではなく、ここからみなさんとつくり上げていくという気持ちで、ご意見をいただいたり改良を加えたりしながら進化させていきたいです。

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文:菊池真帆(Playce) 撮影:葛西亜理沙 取材・編集:石田織座(JDN)
施設写真撮影:御園生大地

eXeField Akiba
https://www.ntte-sports.co.jp/exefield/

丹青社
https://www.tanseisha.co.jp/

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